プロケアよりも、セルフケアが大事なんじゃないか
PMTCやホワイトニングをどんなに頑張っても、歯面が変わらない方はいらっしゃいますよね。そういう方はだいたい家でのケアができていなくて……。セルフケアの方法は伝えていましたが、きちんと取り組んでもらえるように関わる必要があるのでは? とここ数年で考えるようになりました。
私たちが歯面をキレイにするのはもちろん大切ですが、それを維持してより良い状態にするのは患者さん自身のケア。患者さんが自分で歯を守れるように、口腔内に興味を持ってもらったり健康観を高めたりすることこそ、歯科衛生士の役割なんじゃないかと思ったんです。
一方的に話しても、心は動かない
でも、いざセルフケアをやってもらおうとすると、これがなかなか難しい。
「ここが磨けていないです」「この歯ブラシで磨くといいですよ」と一生懸命説明しても、全部「はい」「はい」で終わってしまうんですよ。なんだか寂しいし、私一人でしゃべっているよなって(笑)。そして次の来院時にお口をチェックすると、同じところにプラークが付いているんです。
患者さんに変化がないことに焦り始めて、どうしたらいいだろう? と自分なりに本を読んだり、いろんな人に相談してみました。
そのとき見つけたヒントのうち、ピンときたのが「患者さんに問いかける」というものです。「ここが磨けていないです」と教えるのではなく、「どこが磨けていないと思いますか?」と聞いてみる。そうすると、自然と口腔内について考えるようになり、セルフケアの意識も変わる。なるほど、と思いました。
友達との会話でも、私が一方的に話していたら相手は「うん、うん」と聞き流すだけ。でも「あなたはどう思う?」と問いかけたら話が盛り上がるし、お互い満足して終われる。頭にも残りますよね。患者さんとのコミュニケーションも一緒なんじゃないかと気付いたんです。
「自分で手入れをしないと、良くならないんですね!」
「どこに残っていると思いますか?」
「どうやってこの汚れを取りますか?」
そう患者さんに問いかけるようにしたら、反応がガラッと変わりました。いつも「はい」で終わっていたのが、「こんなところにも残っていたんだ」という驚きに変わったり、「どうしたらいいですかね?」と質問されたり。対話できるようになったんです。それにともなって、家でケアしてくれる方も自然と増えていきました。
たとえば、50代の女性患者さん。最初はPCRが80%近くあり、トリートメントケアをしても「まぁ、ツルツルになったかな?」くらいの薄い反応でした。でも何度も問いかけてやり取りを重ねていくうちに表情が明るくなり、PCRも20%台に。さらに、こんなうれしいことを言ってくれたんです。
「歯が痛くなったら歯医者で良い被せ物をしてもらえばいいと思っていたけど、違うんですね。自分で手入れをしないと良くならないんだって気づきました」
こんなに健康観が高まるなんてびっくり。今も良い状態を維持できるよう、頑張ってくれています。
一時しのぎじゃなく、将来を見据えて歯を守る
ほかにもお口について質問したり、セルフケアに力を入れてくれる方は増えました。自費の補綴物を入れたり、矯正を始めた方も。
正直、ここまで変わるとは思っていませんでした。今までは一時的に歯面を改善するので精一杯だと思っていたから。でも、私が歯面ばかり診ていたから、そう感じていただけなのかもしれません。
患者さんの意識も、口腔内も、もっと良い状態にできる。一時しのぎじゃなく、将来を見据えた予防ができる。そんな自信が持てるようになりました。
今目指しているのは、患者さんが自分で自分の歯を守り、いくつになっても健康で楽しく過ごすこと。歯科衛生士の働きかけ次第で、十分実現できると思っています。
これからは、もっと勉強して患者さんの意識の高さに合わせたサポートを行なっていきたい。それと、将来を見据えた予防ができるということを多くの歯科衛生士に知ってほしいなと思います。最近はそのためにスタディグループも始めたんですよ。一時的にではなく長期的な視点で患者さんと関わることが、当たり前の世の中にしていきたいです。

患者さんの想いを引き出し、個々に合ったサポートをしていくこと。そして技術、知識を更新していく患者さんとラポールを形成することです。
リン・カーライル.2019.『MI(エムアイ) 世界の医療界が変わった、MIの“問いかけ話法”』.
株式会社オーラルケア.2018.『常識を破り、プライドを貫く。患者が求める真の歯科医療を追求した予防歯科のレジェンド』.
発行元はすべて株式会社オーラルケア