一生懸命伝えても、限界がある
当院の先生はすごく予防を重視している方。「自分が出る幕が少ないのがいい」「再治療にならないように」と口癖のようにおっしゃいます。絶対に曲げない、ブレない軸ですね。健康は患者さんが自分の手で保っていくべきもので、患者さんを教育するのが歯科衛生士の仕事。そのことを1年目から教わりました。「TBIは何回やってもいい」と言われて、7回やらせていただいた患者さんもいるんですよ!
一時期、クリーニングなどの“処置”のほうに重点を置きかけてしまったことがありましたが、先生と一緒に参加したヘンリー・H・タケイ博士※のセミナーで「患者さんの意識を変えることが何よりも大事」と改めて学び、初心に返りました。伝えることへの使命感は、そうして自然と育っていった気がします。
だけど、限界を感じることもあったんです。どこに細菌が残っていて、落とすにはどうしたらいいのか。毎日のケアがどれだけ大事か。一生懸命伝えるのですが、どうしてもモチベーションが上がらない患者さんもいて……。何とかしなきゃと思いつつ、もどかしい気持ちでした。
※UCLA歯学部教授および明海大学名誉教授で、歯周病学の世界的権威。予防における患者教育の重要性について積極的に発信している。
患者さんを変えるきっかけは「体感」
そんななか、大きな気づきがありました。ある40代の女性患者さんに『アパガードリナメル』を提案したときのこと。その方はむし歯のリスクが高く、歯周病も進行中。こちらが勧めたアイテムを取り入れてはくれるのですが、なかなか続かないのが課題でした。それが、リナメルの場合は違ったんです。
「ネバつかなくなったし、歯もツルツルでうれしい~! もうこれで磨かないと気持ち悪い」
次の来院時にそうおっしゃって! 自然と毎日のケアに使うようになり、お口の状態もみるみる変わっていきました。最近では「ちゃんと磨けていますか?」「前回言われたところを意識したんですが、どうですか?」など、自分から質問してくれたりもします。
これまでずっと、患者さんのモチベーションを上げるには一生懸命伝えることが大切だと思っていました。でも、伝えることがすべてじゃないんですよね。「自分の口の中が良くなっている」「キレイに磨けている」という手ごたえだって、患者さんが変わる大きなきっかけになる。そのことを実感する出来事でした。
以来、私のほうからしゃべりすぎないよう気を付けています。お口の健康を維持する主体は、私ではなく患者さん。体験してもらったうえで「どうでしたか?」「どう思いましたか?」など、“聞くこと”をメインにしています。
恵まれた環境を活かして、もっと積極的に
医院の中で、私はずっと指示待ちタイプでした。先輩が「こうしよう」って言ったら「ついて行きます!」という感じで……。でも働き始めて7年が経った今は、「こうしたらいいんちゃうか?」と自分で考えられるし、みんなにも「こうするのはどうですか?」と発信できています。いろいろな経験をして、少しずつ自信がついてきたのかもしれません。
こんなふうに成長できたのは、1年目からたくさん学んだり挑戦したりする機会を与えてくれた先生はもちろん、わからないことだらけの私を支えてくれたスタッフみんなのおかげですね!
これからも恵まれた環境を大切にしつつ、歯科衛生士の役割を忘れず、患者さんのお口がより良くなるようなサポートをしていきたいと思います。
各地の温泉を巡り、おいしいご飯屋さんに行くことです♪