目に見えない原因を見つける「だ液検査」
むし歯の直接の原因はミュータンス菌。ですが、この菌が口腔内にいるだけでは歯に穴はあきません。生活習慣のさまざまな要因によってミュータンス菌が活動的になり、脱灰が起き続けることでむし歯が発症します。
<むし歯発症のリスクを高める主な原因>
上手にプラークコントロールできているけれどむし歯を繰り返してしまうという方は、セルフケア以外に問題があるはず。まず患者さん自身が「むし歯になる原因」を見つけることが、予防の第一ステップです。
では、菌の量や唾液の質などの目に見えない原因は、どうやって見つければいいでしょうか? ここで活躍するのが、だ液検査。ミュータンス菌とラクトバチラス菌の量、唾液の量、唾液の力など、目で見ただけではわからないむし歯の原因を調べることができます。
原因を知ることで、行動が変わる
具体的なだ液検査の活用事例を見ていきましょう。
お菓子をたくさん食べても健康な兄と、丁寧に歯磨きしているのにすぐむし歯になってしまう妹がいました。二人を検査してみると……?
ミュータンス菌が多く、唾液が少ないことが原因で、妹のほうがむし歯になりやすいことが判明。この結果を妹にも共有します。
このようにだ液検査の結果を知ると、患者さんは「自分はなぜむし歯を繰り返してしまうのか」「今後むし歯になるとしたら、どんなことが原因になるのか」「予防するには何から始めればいいのか」などを考えるように。そして、自分に合った予防法を見つけ、行動を起こすようになるのです。
大切なのは、患者さん自身が理解すること
だ液検査をするうえで、気をつけたいことが一つあります。それは、「医院側の情報収集」で終わらせないこと。
『デントカルト』というだ液検査を生み出した、故ダグラス・ブラッタール教授はこんな言葉を残しています。
歯を守るために必要なのは患者さん自身のケア。本人が「自分がむし歯になる原因」を理解していなければ、行動は変わらず、結果は堂々巡りになってしまいます。
検査の結果は患者さんと一緒に確認し、わからないことはその場でクリアにしましょう。カリオロジーを理解してもらうことが、歯を守るための大切なポイントです。
また、むし歯の原因の多くは生活とリンクしており、ある種の生活習慣病と言えます。「こういうケアをしたら状態が良くなる」とわかっていても、実際に生活を変えることは簡単ではありません。無理にすべてを変えようとせず、患者さんと相談してできることから始めてもらいましょう。
- さまざまな要素が絡みあって、むし歯が発症する
- 目に見えないむし歯の原因を理解すると、患者さんの行動が変わる
- 「医院の情報収集」ではなく、「患者さんに理解してもらうこと」が大切
ベンクト・オロフ・ハンソン/ダン・エリクソン.2014年.『スウェーデンのすべての歯科医師・歯科衛生士が学ぶトータルカリオロジー』.株式会社オーラルケア.
関山牧枝.2017年.『むし歯と歯周病の「病因論」』. 株式会社オーラルケア.
だ液検査導入をお考えの方は…