PCR20%以下でも疾患は起きる
むし歯や歯周病になるリスクが高い部位=リスク部位
なぜならPCRが20%以下でも、リスク部位に細菌が残っていたら、むし歯や歯周病が発症してしまうからです。
たとえば、こんな患者さんがいたとします。
全体的にとても上手にケアできている患者さん。PCRも低く、大きな問題はないように見えます。しかし患者さんが同じケアを続けるとどうなるでしょうか?
大臼歯の周りにはプラークがたまり続け、少しずつむし歯や歯周病が進行。小さな治療を繰り返し、最終的に歯を失う可能性もあります。PCRが20%以下でも、歯が守れるわけではないのです。
重要なのは、「むし歯や歯周病になるリスクが高い部位=リスク部位」をケアできているかどうか。そして患者さんが毎日リスク部位をケアできるように、歯科衛生士はしっかりサポートしていくことが大切です。
キーリスク部位「大臼歯隣接面および歯肉縁下」
リスク部位は患者さんによって異なりますが、どんな方でも共通してリスクが高い部位が1つあります。それが、大臼歯隣接面および歯肉縁下。
大臼歯の隣接面および歯肉縁下
リスクが高い理由を見ていきましょう。
理由1.萌出時期が他の歯より遅く、萌出期間が長い
萌出中の歯は、「咀嚼による摩擦が働かない」「歯面が未成熟で脱灰しやすい」などの理由からむし歯になりやすい状態。なかでも第二大臼歯は、最後に生えてくるのでケアしづらく、細菌がたまりやすくなっています。萌出期間が16-18ヶ月もあり、上記のような環境に長期間さらされるため、むし歯になるリスクが高いです。
≫第二大臼歯時萌出中のリスクについて詳しくは「リスクが高い年齢は?」
理由2.隣接面と歯肉縁下の面積が広い
歯周病菌は嫌気性菌のため歯肉縁下にひそんでいます。大臼歯は他の歯よりも隣接面と歯肉縁下が広いため、常に歯周病の原因菌がたまりやすくハイリスクです。
上記のような理由から、大臼歯隣接面および歯肉縁下はリスクが高い危険な部位。患者さんに「奥歯をケアするのは難しい」と言われても、諦めずに「どんな方法ならケアできそうか?」一緒に探っていきましょう。
一人ひとり違うリスク部位
キーリスク部位以外にも、患者さん個々のリスク部位があります。
リスク部位の判断材料は、ポケットの深さ、補綴の有無、磨き方のクセなどいろいろありますが、なかでも重要なのが「細菌がたまりやすいかどうか」。むし歯・歯周病は細菌感染症のため、細菌がたまりやすい部位は必然的に病気が発症・進行するリスクが高いのです。毎回プラークがたまっていたり、染め出しで濃く染まる部位は要注意。
- 大臼歯隣接面および歯肉縁下
- 下顎舌側の歯頸部
- 補綴物の周辺
- インプラント・ブリッジ周囲
- 矯正装置周辺
- 孤立歯(特に近心・遠心)
- 叢生部位
- 根分岐部
- 萌出途中の歯の咬合面
上記の部位は特に気をつけてチェックし、少しでも問題があれば患者さんに共有。意識してセルフケアしてもらいましょう。
一方で、細菌がたまっている=リスク部位というわけではありません。その日たまたま磨けていなかったり、一時的に細菌がたまりやすい(例:花粉症で口呼吸になっている)場合もあります。「むし歯・歯周病になりやすいか?」という視点から、リスク部位かどうかを判断することが大切です
- むし歯や歯周病になるリスクが高い部位=リスク部位
- どんな人でも危険なキーリスク部位は、大臼歯隣接面および歯肉縁下
- 細菌がたまりやすい部位は、リスクが高くなりがちなので要注意
ペール・アクセルソン.2009年.『本当のPMTC その意味と価値』.株式会社オーラルケア.