スウェーデン型プラークコントロールとは?
歯を守るには、“患者さんが自分で自分のリスク部位をコントロールすること”が何よりも大切です。その手段の一つになるのが、スウェーデン型プラークコントロール。スウェーデンの予防歯科の考えに基づいているため、この名前がついています。
口腔内を隅から隅まで一生懸命磨くという従来の日本のスタイルとは違い、「予防の成果をしっかり出すためには?」がとことん追求されていて、効率的。患者さんのセルフケアをよりラクにすることにもつながります。
アクセルソン博士(※)の右腕、歯科衛生士のブリギッタ・ニーストレン女史は、次のように話しています。

ブリギッタ女史の言葉を、一つひとつ紐解いてみましょう。
※元スウェーデン・イエテボリ大学歯学部教授。歯を守る方法を確立した“予防の父”。
大切なポイント1. リスク部位
リスク部位とは「むし歯や歯周病になりやすい場所」。いろいろな理由によって、細菌がたまりやすくなっています。リスク部位は一人ひとり違いますが、多くの人に共通する場所もあります。
リスク部位となりやすい場所
- 歯肉縁下(とくに臼歯部)
- 隣接面
- 歯頸部
- 矯正装置のまわり
- 補綴物のまわり
- 叢生部位 …etc.

こうしたリスク部位は、染め出しを行なったり、プロービング値やBOPを確認したりすることで見極めることができます。ただ、歯科衛生士が把握するだけではあまり意味がありません。スウェーデン型プラークコントロールは、患者さんが毎日自分で行なうケア。「どこがリスク部位かをその人自身に知ってもらうこと」が何より大切なポイントです。
大切なポイント2. 道具選び
ほとんどの人は、毎日の歯磨きに3列ブラシを使っていると思います。でも、3列ブラシ1本でリスク部位の細菌をきちんと落とそうとすると、なかなかのテクニックと時間が必要です。無理に落とそうとして、歯肉を傷つけてしまうことも……。
そこで、大切なのが「その部位に合った道具を選ぶこと」です。
例えば、歯頸部や叢生部位にワンタフトブラシ、歯肉縁下にフロスなど。リスク部位に合った道具を使えば、短時間でラクに細菌を落とすことができ、患者さん自身にも口腔内にも負担がかかりません。

「ここの細菌を落とすにはどんな道具がいいだろう?」患者さんと一緒に考え、実際に試し、最適なものを選んでいきましょう。
大切なポイント3. ケアする順番
リスク部位に合った道具を選んだら、次は実際のケアへ。そのとき、スウェーデンの歯科が大切にしているのが「リスク部位を先にケアすること」です。なぜ先にケアする必要があるのでしょうか。
答えは「最初のほうが集中力が高いから」です。リスク部位は他のどこよりも優先して細菌を落としたいところ。集中力がある最初のうちにケアしてしまおう! というわけです。
例えば、歯肉縁下をフロスでケアし、歯頸部や叢生部分はワンタフトブラシ。最後に全体を3列ブラシでササッと磨く。全体をまんべんなく丁寧に磨くより、短時間でキレイにできます。
スウェーデン型プラークコントロールは、むし歯や歯周病を効果的に防ぐため、人間の心や行動をしっかり考えて生まれたセルフケア。患者さんに効率よくラクに成果を出してもらうため、ぜひ提案しませんか?
- スウェーデン型プラークコントロールは、リスク部位に着目したセルフケア
- 歯ブラシ1本で磨くよりラクに、確実に成果を出せる
- リスク部位を見つけ、適した道具で最初にケアするのがポイント
ペール・アクセルソン.2009年.『本当のPMTC その意味と価値』.株式会社オーラルケア.